中古アパートの大規模修繕は、建物の資産性を維持することに繋がります。新築時から築年数が経過し外壁の汚れが目立ってきた、階段や廊下がサビついてきた、といった場合には大規模修繕の実施を検討しましょう。
大規模修繕は、建物の全体的な修繕になるため部分的な修繕よりも多額の費用が必要です。
とはいえ大規模修繕を先延ばしにしていると、建物の状態はさらに悪化し修繕費用が膨れ上がったり、入居者の安全性を確保できずに大きな事故に繋がったりしてしまうリスクが高まります。
なるべくコストを抑えたいと考えている方こそ、適切な時期での大規模修繕が不可欠です。そこで本記事では、中古アパートの大規模修繕の費用目安を紹介します。修繕コスト削減の方法も紹介するため、費用を心配されている方はぜひ参考にしてください。
中古アパートの大規模修繕とは
中古アパートの大規模修繕とは、計画的・予防的に行う外壁や屋根など建物の全面的な修繕工事のことです。主な目的は機能性・安全性・美観を新築同等に回復させることですが、回復にとどまらず新築時よりも性能を向上させる改良工事も含まれます。
中古アパートの大規模修繕の具体的な内容は以下の通りです。
・外壁や屋根の塗装など
・防水工事
・給排水管の更新
・設備の交換など
工事の規模が大きいため費用も高額になりやすく、工事期間も長いです。さらに工事内容によっては、足場が必要になり日常生活に支障がでることも。そのため事前に工事計画を立てて、資金を準備するとともに工事の2~3か月前には入居者や管理会社様などに時期や期間を説明するなどの配慮も必要になります。
中古アパートの大規模修繕の費用目安
中古アパートの大規模修繕の費用目安について、以下3つの観点から紹介します。
・中古アパートの大規模修繕費用と周期
・【築年数ごと】中古アパートの修繕内容と費用
・【内容ごと】中古アパートの大規模修繕の単価
修繕費用は劣化状況やアパートの規模により異なるためあくまでも目安として参考にしてください。
中古アパートの大規模修繕費用と周期
中古アパートの大規模修繕は10~15年に1回行われるのが一般的です。国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、木造全10戸の中古アパートの修繕費用のイメージを以下のように紹介しています。
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大規模修繕の回数 |
1Kタイプ |
1LDK~2DK |
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1回目(11~15年前後) |
約520万円(戸あたり約52万円) |
約640万円(戸あたり約64万円) |
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2回目(21~25年前後) |
約800万円(戸あたり約80万円) |
約980万円(戸あたり約98万円) |
2回目の大規模修繕のほうが高額になっている理由は、1回目よりも築年数が経過したことで劣化が進んでいるためです。
たとえば屋根工事の場合、1回目は塗装で対応できても2回目のタイミングでは屋根材の傷みが進み、新しい屋根材に交換する葺き替え工事などにより大規模な工事が必要になる可能性があります。
2回目の大規模修繕は1000万円近くの費用がかかることになっていますが、すべての修繕を同じタイミングで実施する必要はありません。外壁と屋根の塗装など足場が必要な工事はまとめて行ったほうが足場仮設費を節約できますが、それ以外はそれぞれ劣化状況に合わせた時期での修繕で問題ないでしょう。
【築年数ごと】中古アパートの修繕内容と費用
中古アパートでは、大規模修繕とは別に部分的な塗装や修理など小規模な修繕も必要です。国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、小規模な修繕やメンテナンスも含めて、以下のように紹介しています。
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築年数 |
修繕内容 |
木造10戸 (1K) |
木造10戸 (1LDK~2DK) |
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5~10年目 |
ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 排水管(高圧洗浄等) |
約70万円 戸あたり7万円 |
約90万円 戸あたり9万円 |
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11~15年目 |
屋根・外壁(塗装) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 給湯器等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄等) |
約520万円 戸あたり52万円 |
約640万円 戸あたり64万円 |
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16~20年目 |
ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
約180万円 戸あたり18万円 |
約230万円 戸あたり23万円 |
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21~25年目 |
屋根・外壁(塗装・葺替) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 浴室設備等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄) |
約800万円 戸あたり80万円 |
約980万円 戸あたり98万円 |
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26~30年目 |
ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
約180万円 戸あたり18万円 |
約230万円 戸あたり23万円 |
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30年目までの修繕費用の合計 |
約1740万円 戸あたり174万円 |
約2160万円 戸あたり216万円 |
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築30年目までで約1740万円かかると想定すると月に約5,000円、約2,160万円かかるとすると月に約6,000円ずつ積み立てておく計算です。
上記の表では30年目までの修繕内容になっていますが、30年以降も引き続き修繕しなければいけません。15年周期で大規模修繕が必要になること、さらに劣化が進んだり工事単価が上がったりする可能性があることを想定して、余裕をもって積み立てておきましょう。
中古アパートの修繕は、これまでどのような修繕を行ってきているかによって、これから必要な内容が異なり、かかる費用も変わってきます。
上記はあくまでも目安です。中古アパートの大規模修繕を検討する際は、建物の劣化やメンテナンスの状態、劣化以外の不具合の有無などを把握し、どのような修繕が必要なのか判断することがポイントになります。
【内容ごと】中古アパートの大規模修繕の単価
以下が工事内容ごとの単価の目安です。劣化状況に合わせて部分的に修繕を進めていきたい場合に参考にしてください。
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工事内容 |
費用単価 |
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足場仮設費 |
800~1,200円(㎡・平米あたり) |
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屋根・外壁塗装 |
2,000~5,500円(㎡・平米あたり) |
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鉄部塗装 |
2,500~4,000円(㎡・平米あたり) |
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バルコニー・ベランダ防水 |
3,000~10,000円(㎡・平米あたり) |
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屋根の葺き替え |
15,000~25,000円(㎡・平米あたり) |
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給湯器の交換 |
10~30万円(戸あたり) |
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給排水管の交換 |
20~100万円以上(戸あたり) |
使用する塗料・屋根材・設備のグレードなどにより費用単価が変わってきますが、単価が安ければよいというわけではありません。
たとえば塗装に使用する塗料は、耐用年数が長い塗料ほど単価が高くなる傾向があります。
安さ重視で選ぶと塗り替えサイクルが早まりトータルの塗装回数が増え、結果的に塗装費用が高くついてしまうケースもあるため、長期的な視点で費用と耐久性のバランスを考えて検討することが大切です。
中古アパートの修繕や維持管理で気を付けるべきポイント
中古アパートならではの修繕や維持管理で気を付けるべきポイントを2つ紹介します。安全性に大きく関わってくる部分になるため修繕内容を検討する際に参考にしてください。
・雨や紫外線の影響を受けやすい外廊下や外階段
・消火器の使用期限
以下で詳しく解説します。
雨や紫外線の影響を受けやすい外廊下や外階段
中古アパートの外廊下や外階段は、雨や紫外線の影響を直に受けるため傷みやすい箇所です。木造の場合は木材が腐り、鉄骨造の場合はサビて弱くなります。
定期的なメンテナンスや大規模修繕を怠ると、傷んだ階段や廊下の床が抜ける大事故に繋がりかねません。階段の手すりがもろくなっている場合は、手すり自体が落下して周辺に危害を与えてしまうこともあるでしょう。
一見きれいに見えても鉄部分が腐食したまま上から塗装されていて、腐食部分が補強されていないケースもあります。
アパート外階段の崩落事故があったことを拝啓に、令和4年に設計・施工に関するガイドラインが(木造の屋外階段等の防腐措置等ガイドライン)制定されました。
ガイドラインにより、設計・施工時に外階段には屋根や庇をつけるなどの対策が推奨されるようになりましたが、それ以前に建てられたアパートは外階段や外廊下の状況がどのようになっているか、とくに注意して見ておきましょう。
消火器の使用期限
アパートの廊下に置かれた消火器は使用頻度が低く意識されにくいこともあり、使用期限が切れているものが置かれているのがよく見受けられます。
延べ床面積や用途によっては、消防設備点検の報告義務が緩和される場合がありますが、消火器の管理や点検は安全確保のために実施しておくことが望ましいです。
万が一、火災が起きた際に置いてあった消火器が使えないとなると、オーナー側の責任問題になる可能性があります。入居者の命を預かっている以上、災害時の安全性への配慮は欠かせません。
アパートの廊下に置かれた消火器の使用期限は、おおむね10年間程度です。前のオーナーから引き継がれずに使用期限が切れた消火器がずっと放置されているケースもあるため、確認しておきましょう。
下記動画では、中古アパートの劣化や不具合のチェックポイントを紹介しているため参考にしてください。
【アパート経営の盲点】中古物件の契約不適合責任“免責”多数⁈ 新築も要注意!見えない劣化で失敗しないためのチェックポイントとは?
中古アパートの修繕コスト削減には定期点検と予防保全が有効
定期点検と大規模修繕による予防保全が、中古アパートの修繕コスト削減に繋がります。
10年に1回、ホームインスペクション(住宅診断)を利用して、不具合が生じる前や深刻な状況になる前に直すことで、最終的なトータルコスト削減が可能です。入居者の満足度も高められるでしょう。
また建物のダメージも減らせるため、よい状態が長持ちしやすいのも利点です。
一般的にアパートの大規模修繕の目安は、10~15年程度と言われていますが、実際は建物の劣化状況や仕様などにより大きく変わってきます。
定期的に劣化の事象や不具合の状況を把握することで、過剰または不十分な工事になることを避けられるため、より実態に則した計画的な修繕が可能になるでしょう。
中古アパートの大規模修繕で得られるメリット
中古アパートの大規模修繕は、数百万から千万円単位の費用がかかりますが、以下の大きなメリットが得られます。
・長期的に住宅の性能を維持できる
・家賃収入の安定を図れる
・売却時に有利になる
順に見ていきましょう。
長期的に住宅の性能を維持できる
中古アパートの大規模修繕を怠っていると、構造部分に影響を与える雨漏りや水漏れといった深刻な不具合に発展します。とくに水に関するトラブルは、目視できない壁の中や普段見ることがない床下などで被害が拡大しやすく、気が付いたときには修理代が高額になっていることも少なくありません。
また建物の耐久性を著しく損なう危険性があり、アパート自体の寿命を縮める原因のひとつです。専有部への水漏れにより入居者の一時避難が必要になると、家賃収入を得られなくなったり入居者への保証も考えなければいけなくなったりしてしまう可能性もあります。
アパートの性能を長く維持して建物の寿命を延ばすために、定期的な大規模修繕が不可欠です。
家賃収入の安定を図れる
大規模修繕により機能性や快適性が維持または向上すると、入居者の満足度が高くなり退去を抑制し長期入居に繋げられます。きれいに塗装された外観や清潔感ある共用部は、内見時の印象をよくし、購入検討者の背中を押すでしょう。
国土交通省の資料によると、計画的に修繕を実施したことの効果として、以下の調査結果が公表されています。

出典:国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)付「賃貸住宅管理業者向け計画修繕ガイドブック」
29.3%のオーナーが計画的に修繕を実施したことで高い入居率を確保できた、28%が家賃水準を維持できたと返答しています。
築年数が経過するほどアパートの賃貸需要も減少するのが一般的です。
しかし大規模修繕で近隣物件にはないニーズを満たした付加価値を付けられれば、既存入居者の退去後に家賃を値上げして募集できる可能性もあります。
売却時に有利になる
大規模修繕により、外壁や共用部のメンテナンスを行い美観を向上させると、物件の印象アップに繋がります。見た目だけではなく、最新設備の導入やバリアフリー化といった機能性をアップさせる工事も大切です。
入居率の高さも売却時に影響するため、居住者の満足度が高い物件=入居率がよい=資産価値が高い、といった好循環が生まれます。大規模修繕が済んでいるアパートは、買主の修繕コストの負担が少なくなるため、利回りが低くても売れやすいです。
長期的な視点で、選ばれ続けるアパートであるために、大規模修繕の実施が重要といえるでしょう。
中古アパートの大規模修繕費用は「経費」または「減価償却(資本的支出)」になる
中古アパートの大規模修繕にかかる費用は、経費として計上できるものと減価償却できるものに分けられます。
経費になるのは、基本的に原状回復や維持管理(元の状態に回復させる)が目的の工事です。その年に一括で経費計上できるため、高所得な年の節税に効果があります。
具体的には、外壁の再塗装・バルコニーの防水補修・雨漏り修理・設備交換(同等品)などです。
一方、減価償却できるのは、性能向上など価値を高めることが目的の工事が該当します。資産計上して耐用年数に応じて償却できるため、低所得な年や利益が安定している場合に将来の税負担上昇を抑えるのに効果的です。
ただし工事の目的だけでなく金額も「経費」か「減価償却か」の補助的な判断材料となります。
中古アパートの大規模修繕は、劣化状況に応じて修繕時期を決定するのが前提にはなりますが、所得に応じて戦略的に修繕時期を早めたり価値を上昇させる改修工事を行ったりすることも検討しましょう。
計画的な大規模修繕で中古アパートのコスト削減・収益性アップに繋げよう
中古アパートの大規模修繕は、外壁や屋根の塗装、バルコニー防水、設備更新など建物全体を対象とする工事で、10~15年の周期で実施されるのが一般的です。
木造10戸(1K)の場合の大規模修繕の費用は、1回目が520万円、2回目が800万円が目安になります。
ただしこれまでの修繕履歴や劣化状況、アパートの規模により異なるため、まずはホームインスペクションなどで専門家にアパートの状態を調査してもらい現状把握することが大切です。
大規模修繕を先延ばしにしていると、劣化が進行し費用がかさんだり事故リスクが高まったりするリスクがあります。定期的に点検し大規模修繕を実施して、建物の性能や売却時の価値の維持(向上)、家賃収入の安定化を図りましょう。
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