ホームインスペクター 小西 昌太

監修者:小西 昌太

さくら事務所プロホームインスペクター/一級建築士

建売住宅は寿命が短い?注文住宅との比較や長寿命化のポイントもご紹介

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建売住宅は寿命が短い?注文住宅との比較や長寿命化のポイントもご紹介

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

「建売住宅は寿命が短い」と考える方もいるでしょう。建売住宅は比較的安い価格で販売されているため、気になる方も多いかもしれません。しかし、実際のところはどうなのでしょうか?

そこで本記事では、建売住宅の寿命について解説します。注文住宅との違いや寿命を延ばすポイントも紹介しているので、併せて参考にしてください。

建売住宅の寿命の目安は約69年

建売住宅の寿命は約69年です。しっかりメンテナンスしていれば60年以上持つ可能性は充分にあります。正確には60年頃に大規模な修繕を実施すれば、さらに寿命は伸ばせるでしょう。

国土交通省が公表している「建物の平均寿命について」の資料では、木造住宅の平均寿命に関する調査結果について下記の表を掲載しています。表を見ると2011年の調査では、木造専用住宅の平均寿命は65年を超えています。

さらに、早稲田大学の小松幸夫先生の建物の寿命に関する最新の調査結果によると、2021年に算出された平均寿命は68.81年まで伸びています。

参照:日本建築学会計画系論文集 第90巻 第836号 「2021年における建物寿命の推計 小松幸夫、堤洋樹」

建売住宅といってもローコストからハイコストまでさまざまです。住宅性能表示制度を取得している建売住宅の場合は「劣化対策等級」が寿命を判断する目安のひとつになります。

劣化対策等級は3段階評価です。住宅の寿命に大きく関わる柱や土台の大規模な改修が必要になる年数が以下のように異なります。

劣化対策等級1:25~30年

劣化対策等級2:50~60年

劣化対策等級3:75~90年

劣化対策等級の数字が大きいほど寿命が長い傾向があると言えます。ちなみに一般社団法人 住宅性能評価・表示協会の「令和5年度 建設住宅性能  評価書(新築)データ(一戸建ての住宅)」によると、98.8%が等級3を保有しています。

出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会の「令和5年度 建設住宅性能  評価書(新築)データ(一戸建ての住宅)」

建売住宅の寿命が30年と言われる理由

60年以上持つ建売住宅ですが、寿命が30年と言われる理由があるのです。 ここでは以下2つの理由を紹介します。

・滅失住宅の平均築後年数が30年

・木造住宅の法定耐用年数が約20年

順に詳しく見ていきましょう。

滅失住宅の平均築後年数が30年

滅失住宅の平均築後年数が30年だったことから「寿命が30年」と言われることがあります。滅失住宅とは、取り壊された建物です。取り壊された建物のなかには、まだ住める住宅も含まれているため、30年が建売住宅の寿命とは言えません。

日本は、自由度が高く設備や性能面で安心感のある新築を希望する方が多く、メンテナンスやリフォームすればまだ使える住宅でも建替えられています。そういった日本国民の意識もあり滅失住宅の平均築後年数が短いです。

木造住宅の法定耐用年数が22年

木造住宅の法定耐用年数が22年であることも、建売住宅の寿命が短いと言われる理由のひとつです。

確かに木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、法定耐用年数は税法上で価値がなくなる年数で、決して住めなくなる年数ではありません。

法定耐用年数は実際の寿命よりもはるかに短いです。寿命とは無関係にもかかわらず「法定耐用年数=寿命」と認識されていることがあります。

建売住宅と注文住宅の寿命は差がない

「建売住宅は注文住宅より寿命が短い」と聞いたことのある人もいるでしょう。しかし、建売住宅と注文住宅の寿命には大きな差はありません。

ここでは、寿命の差がない理由について解説します。

建築基準法により一定の品質が担保されている

建売住宅の寿命は、注文住宅と大きな違いはありません。なぜなら、同じ建築基準法に沿って建てられているため、一定の品質を担保しているからです。

また、戸建て住宅を建築する際には、公共機関の検査を受ける決まりがあります。これは建売住宅にも適用される決まりであるため、検査を受けた物件は一定以上の品質があるとの証明にもなるでしょう。

つまり必ずしも「建売住宅だから寿命は短い」「注文住宅のほうが品質の高い住宅を購入できる」とは言えないのです。

品確法によって保証されている

建売住宅であっても注文住宅であっても、新築住宅は、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって住宅の品質が引渡しから10年間保証されています。

これは住宅の見えない部分(構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分)に不具合や欠陥が見つかった場合、10年間に限り無償で修理や損害請求を行えるものです。

品確法があることによって建築側に多大なペナルティが課せられるため、手抜き工事をする業者が激減したともいわれています。

建売住宅の寿命を左右する5つの重要ポイント

建売住宅の寿命を左右するポイントは、主に以下の5つです。

  • 施工品質
  • 使用材料
  • 地盤や土地
  • 雨漏り
  • メンテナンス

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

施工品質

建売住宅の寿命には、施工品質が大きく関係しています。たとえ優れた材料を使用しても、施工の品質が伴っていなければ住宅性能は低くなるでしょう。

建売住宅の場合は、完成後に初めて建物を見るケースも多いため、自分では構造に関わる内部までチェックできないかもしれません。

しかし完成後でも調べられることもあります。約8割の新築工事で初期の不良が見つかっているのが現状です。ホームインスペクションを活用して、施工時の不具合に早めに対処しておくことが大切です。

使用材料

建売住宅に使用する材料も、寿命に関与しています。品質の悪い材料を使えば、その分劣化するスピードも早くなるでしょう。

そのため、建売住宅を建設中、もしくは完成後には「どのような建築材料を使ったか」「使用した材料や工法の耐用年数は何年か」などを売主などに確認してみてください。

地盤や土地

地盤や土地の強さは建物の寿命に直結します。地盤が弱いといくら性能がよい建売住宅だったとしてもその性能を発揮できません。地盤は、地盤調査報告書で確認できるため購入前にチェックしましょう。

また、地震による液状化や豪雨による浸水も寿命に関わってきます。これらの災害リスクはハザードマップで調べられるため、合わせて確認しておきましょう。

雨漏り

雨漏りは建物に致命的なダメージを与えます。最悪の場合住めなくなることも。雨漏りは、初期の不良が原因で生じることも少なくありません。
さらに長い時間をかけて雨染みとなって現れるため、気がついたときには被害は深刻化しているケースが多いです。

雨漏りの平均的な工事費用は200万円前後、状態が悪いと700万円を超えることもあります。瑕疵担保責任では10年間、雨漏りの保証がされているため、9年目にしっかり検査しておくことが重要です。

メンテナンス

建売住宅を少しでも長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスは欠かせません。例えば、築5年ごとに防蟻処理を施したり、築15年前後で外壁や屋根の補修工事を行ったりすることで住宅寿命を延ばせます。

メンテナンスには点検する手間や修繕費用が発生するため、後回しにしてしまう人もいるでしょう。しかし、日頃から丁寧に暮らしておくことで長く快適な生活が送れるようになります。

【独自集計】建売住宅の寿命を守るためのメンテナンス費用と内容

さくら事務所では毎年、建売住宅購入後にメンテナンス費用がいくらかかると予想されるか、その時々の単価に合わせて試算しています。ここでは下記の建売住宅を想定して、2025年のデータをもとに築年数ごとのメンテナンス費用とトータルのメンテナンス費用をみていきましょう。

【住宅の仕様(一般的な新築建売住宅を想定)】
・延べ床面積:35坪
・構造:木造在来軸組み工法の総2階建て
・屋根:化粧スレート
・外壁:窯業系サイディング
・バルコニー:1か所あり
・外部建具:アルミ樹脂複合サッシ+Low-E複層ガラス

築年数別のメンテナンス費用

まず築年数別のメンテナンス費用と内容について、以下の表をご覧ください。

築年数・項目別の費用(万円)

5年

10年

15年

20年

25年

30年

35年

40年

45年

50年

屋根

外壁

再塗装

150

150

葺替え・張替え

※サッシ・外装金物含む

640

バルコニー

防水

10

10

10

設備交換

給湯器

27

27

27

便座

12

12

便器

22

コンロ

19

19

キッチン

65

ユニットバス

95

洗面台

20

その他

防蟻処理

16

16

16

16

16

16

16

16

16

16

築年数別の費用合計(万円)

16

16

234

16

16

895

16

16

234

16

※さくら事務所の集計データをもとに独自作成

建売住宅のメンテナンス費用を考えるときにポイントとなるのは「およそ15年スパンで大きな費用がかかる」という点です。

なかでも築30年頃は、屋根の葺替えや外壁の張替え、キッチン・ユニットバスなどの高額な設備交換が必要となり、50年間でもっともメンテナンス費用がかかります。

ただし必ず15年周期でやる必要はありません。たとえば30年のタイミングでいきなり900万円近くの支出が難しい場合は、25~35年で分散してメンテナンスするとよいでしょう。

すべての建売住宅で当てはまるわけではありませんが、「いつどのくらいのメンテナンス費用が必要になるのか」の目安として参考にしてください。

築50年までにかかるメンテナンス費用は約1500万円

2025年のデータをもとに試算すると、築30年までのメンテナンス費用は1193万円築50年まで見据えると合計1475万円です。合計費用で考えると膨大な額に感じられますが、月間3万円前後積み立てておくと足りる計算になります。

費用合計

年間積立額

月間積立額

築30年まで

1193万円

39.8万円

3.3万円

築50年まで

1475万円

29.5万円

2.5万円

マンションの場合は、修繕積立金として強制的に修繕費用が徴収されていますが、戸建ての場合は自分で資金を用意しておかなければいけません。将来必要にあるであろうメンテナンス費用を逆算して資金計画を立てておかないと、築15年、30年、45年のタイミングで困る可能性があります。

実は2020年のデータでは、築30年までで876万円、築50年までで1104万円でした。しかし昨今の建築・建設業界の物価や人件費高騰にともない、メンテナンス費用も約1.4倍に上昇しています。インフレが続く限り今後も値上がりしていくでしょう。

住宅のメンテナンスはお金がかかりますが、その時々のライフスタイルに合わせて家をカスタマイズしていける楽しみがあります。設備や仕様などの選択肢が増えるとその分将来の生活も豊かになるため、長期的な視点で前向きにメンテナンス費用を備えておきましょう。

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建売住宅と注文住宅の寿命は変わらない!メンテナンスしながら長く快適に暮らそう

購入価格を抑えられる建売住宅ですが、寿命は注文住宅と大差はありません。一定の基準に沿って建築されているため、安心して暮らせます。

また、建売住宅に限ったことではありませんが、寿命を延ばすには定期的なメンテナンスを行うことが不可欠です。品確法などの保証を利用しながら、計画的に点検・修繕を行なっていきましょう。

なお、施行品質の見極めには、ホームインスペクションの活用がおすすめです。ホームインスペクションとは、住宅に関する専門知識を持ったホームインスペクターが、第三者の視点で住宅の不具合や欠陥の有無などをアドバイスすることです。

外からは見えない箇所もチェックするため、一定以上の品質を担保した住宅を購入できます。寿命の長い住宅を購入したい場合は、ぜひさくら事務所のホームインスペクションを利用してみてください。

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ホームインスペクター 小西 昌太

監修者小西 昌太

さくら事務所プロホームインスペクター/一級建築士

さくら事務所プロホームインスペクター。一級建築士。基本スタンスでもある「第三者性、中立性、客観性」を最大限に活かしたコミュニケーションを心掛け、可能な範囲で建物の現状をより多くの人へわかりやすく伝えられる「住まいの良き翻訳者」を目指します。

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